改定 西遊記 完結 編
「おっしょさん、おっしょさんは、あの国にいれば、好きな学問をして、高い位のおぼうさんとしてのんびりくらせたはずなのに、どうしてこんなに苦い思いをして旅をなさっているのですか。」
「ごくう、おまえは私が私のもっていたすべてのものをすてて、このような旅をしているのが不思議に思えるのですね」
「おっしょさん、ごくうだけではありません。私たち3人いつも不思議に思っています。あの国にいたら私たちみたいなものよりもっと立派な人がお伴をしてくださったでしょうに。」
「それに、おいしいものをいくらでも食べられたでしょうに。」
「あの国を出るとき、伴のものはおりませんでした。しかし、今は3人もの力強い伴がいます。それに、この体をさささえるだけの食事は十分にしていますよ。」
「そんなに行ってみたいところなのですか、その、今、私たちが行こうとしているてんじくとやらは。」
「そうです。この私かせひともいきたい、いえ、いかなくてはならないところなのです。」
「いったい何があるのですか?」
「宝かいっぱい?」
「おいしい食物がいっぱい?」
「とてもよいところですよ、とても。」
「でもこんなに苦労しなくても、おいらのきんとんうんにのれば、ひとっとびでたどりつきますよ。」
「そんなにかんたんに行ってしまえるところではないのですよ、ごくう。 今、私は私がその人に会うにふさわしい人間であるかどうか、ためしているのです。病める人を見まい、苦しむ人を助け、そして、その人に会うためなら自分の生命をも犠牲にするつもりでいます。そしてその決心が本物かどうか、ためしているのです。」
「おいらだっておっしょさまのためなら生命ぐらい。」
「ありがとうみんな、私たちが苦労しててんじくにつき、その人に会えたら。その人は私たちの苦労を知り、行いを知って、ねぎらってくださるであろう。そして、そこでの平安を思うと、こうして苦労を重ねていても、少しも苦労だとは思えなくなる。」
「そんなもんですかね、おいらにゃよくわかりません。」
「いずれ わかる。そこについてその人に会えば、な。自分が誰で、何をしてきたのかもな。」
「おいらはごくうで、おっしょさまといょに旅をしているのです。」
「その人が誰なのか、おまえたちにもいずれわかります。そのときまで、いえ、それからもいっしょに旅をしてくれますね。」
「はい。よろこんで。」
「では少しいそぎましょうか。」